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MoMAの視察と、ニューヨーク・アートにふれる
<エコー会会誌『絵好』 第59号>
絵好ずいひつ

 昨年十一月、機会を得てニューヨークとペルーのリマ、ブラジルのマナウス等を訪問しました。主として文化・芸術と、環境に関する会議に出席する旅でしたが、多くの人々と語らい、たくさんのアートシーンに出会いまた。今回と次回の二回にわたり、その報告をしたいと思います。まず、ニューヨークのアート状況からです。
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◆リニューアルしたMoMA 
 世界初の近代美術館としてスタート(一九二九年)し、今なお各国の近・現代美術館に多大な影響力を与え続けているニューヨーク近代美術館(MoMA)。この増改築プロジェクトに建築家・谷口吉生氏が関わり、大きな話題を呼びました。その完成は二〇〇四年一一月。2年半の歳月と約4億2千5百万ドルが投じられました。
 私がどんな犠牲を払っても訪れたいと、ニューヨーク入りして真っ先に向かったのがMoMAです。同館のカレン・デビットソン副部長は、時間をかけ丁寧に、経過や特徴、その後の市民の評価などを説明してくれました。同館のリニューアルは国際的なデザインコンテストから始まっています。興味深かったのは、それがビデオやデジタル機器を使ったイメージ重視のデザインではなく、11in×17inの箱でデザインを競う方式で、設計者の想像力を試す選考法だったことです。「谷口氏の設計はMoMA自身とその歴史、ニューヨーク市街建築の持つ特徴が理解しつくされていた」と、審査委員から絶
賛を浴びたといいます。
 もう一つ興味深かった話は、このプロジェクトが進行している最中にあの「9.11同時多発テロ」が起こったことです。経済が大打撃を受け、将来が不透明な状態に陥った中で、「建築続行」の励ましの声を出したのは、ジュリアーニ・ニューヨーク市長や多くの政治家だった、という事実に、私は少なからず感動を覚えました。建設にかかる総費用の10%分の資金さえ、ニューヨーク市が拠出。純粋な民間施設に市が資金提供をしたのは初めてのことだと聞きました。美術館改築は、経済再生の起爆的役割を果たす事業になると、関係者たちは確信と希望を持って取り組んだのです。
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、20ドルという高めの入場料設定にもかかわらず、リニューアル・オープン後の半年で百四十万人が来館。従前は一日五百人もいなかったレストランは二千人を超す利用客でごった返し、来館者は改築前の二倍以上の時間を美術館内で過ごしている、というデータもあげています。谷口氏のコンセプトは、美術館の建物自体を一つの作品としてデザイン。ここを訪れた人々は、美術作品・谷口デザイン・NYの歴史ある街並みを、一か所で楽しめるようになったのです。
 前述のカレン女史は「美術館関係者のみならず、NY市や多くの芸術家も、この改築プロジェクトがもたらした結果に、十分満足していることをお伝えしたい」と、満面の笑みで答えてくれました。
 マチスの大作「ダンス」は、最上階の展示室から階下へ降りる階段ホールの壁面に架けられていました。あえて、そこを選んで掲示したとのこと。ピカソの「アヴィニョンの娘たち」、ルソーの「星月夜」など、名作中の名作を、私はじっくりと何回も見直すことのできる至福の時間を過ごしました。もちろん、ウォーホルやリキテンシュタインら、アメリカ現代美術の先駆者たちの充実した作品群にも、目を見張らされたことはいうまでもありません。
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 ◆SOHOとチェルシー
 よく聞かされるSOHO。ハウストン・ストリートの南側という、地域名を指します。空き家ばかりとなった倉庫街に、二十世紀半ば自然発生的に芸術家が住み着き、アトリエが集中した場所です。アメリカン・アートはここが発信源の一つとなりました。現在は、どちらかというとブティックやレストランの街。ここにはNY市を代表する歴史的建造物が点在し「キャスト・アイアン様式」の特徴ある建物が、たくさん保存されています。
 一方のチェルシー地区。ハドソン川沿いの倉庫群には、ユニークなギャラリーが続々と。アメリカ発の最新アート震源地は、今やチェルシーに移った感があるほどです。四百を超えるといわれるギャラリーのほか小劇場など、パフォーミング・アーツもここに集中しています。ここで面白いものを見つけました。
 一九八〇年代に廃止になった貨物の高架鉄道跡です。この再利用プロジェクト(ハイライン計画)が進行中でした。跡地保存と再生を呼びかけたのは、「フレンド・オブ・ザ・ハイライン」。周辺住民や経営者、市民組織で構成されたNPO組織です。
 何と、この再生デザインを、NPOが国際的なアイデアコンペの対象にしたというのです。これには、世界36カ国から720チームの参加が得られ、計画推進にはキャピタル・ファンドも作られました。しかも、昨年度の米国政府予算にさえ、ハイライン計画プロジェクトのために、百万ドルが計上されていたと聞いて、「アメリカ的だなぁ」と、感心させられたものでした。
 チェルシーに「ニュー・ミュージアム」という今注目されている美術館があります。一切美術作品を購入しない代わりに、購入代金を芸術家支援と作品紹介の展覧会費用に充てる活動を続けています。美術館の持つ知識・験・ノウハウを積極的に社会還元し、運営費用は徹底して寄付に仰ぐという方針を、七七年の設立以来続けて評価を得てきました。この美術館は、現在SOHOに新美術館の建設を進めていますが、ここでも日本人建築家が活躍していることを知って、誇らしく思いました。アーキテクトは、話題の「金沢二十一世紀美術館」を創った妹島和世・西沢立衛の両氏です。「SOHOの新たな目玉」と、今から期待を集めていました。二〇〇七年に完成するとのことですが、チェルシーの仮設美術館にあったパースを見て、是非とも新館を訪れたい、との思いに駆られました。
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 ◆横浜が学ぶこと
 「芸術・文化を生業にしている人々にとって、横浜はとても活動しやすいし、市の支援策にも興味を持っています」。ジャパン・ソサェティ(日米協会)の舞台公演部長である塩谷陽子さん。国連本部が見える協会事務所で、アメリカから見た日本の文化・芸術活動や、最新のアメリカン・アート情報等を伺ったときのことです。
 塩谷さんは、芸術支援に関する調査研究を、日本の各種財団・企業・自治体を対象に行いながら、そのあり方を日本社会に問い続けている専門家。九七年から日米協会内で現職の仕事に就いて、アメリカの最先端アートをわが国に紹介するとともに、日本のアーティストやその作品をアメリカに送り込んでいます。氏が横浜を評価した一つの事業は、横浜市と市民団体が協働で取り組んでいる「BankART1929」。これは旧富士銀行や旧第一銀行等の歴史的建造物を使用して、多様な文化創造活動を行っている時限事業を指します。場所を提供した行政と、そこで活動する市民組織。創造都市
を目指した横浜の新たな試みで、日・米間を頻繁に行き来している塩谷さんにも、情報が届いていたのでしょう。
 ともあれ、文化・芸術活動においても、NY市では圧倒されるようなエネルギーを率直に感じます。チェルシーのギャラリーや小劇場は、ま
さに増殖する勢い。アーティストとその周辺の人材を育てたり、仕組みそのものを新たに生み出す活動に、NPOが力強く関わっていることや、ファンドのつくり方なども、自治体行政に関わっている者として学ばなればならない大事な点だと思います。
 ただ、塩谷さんの次の言葉も実に印象的でした。「NY市が率先して、アーティストの住みやすくなるような法律や条令を作ったなどという話を、私は聞いたことがありません。また、アートのために市が何か特別なことをしているわけでもないのです。アートは、何とかしたい人々が、何とかしてきた結果としてあるものだと、つくづく思います」。


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